昨日といい今日といい春そのものというような穏やかな日和、上着を脱いでしまう程の温かさになった。このまますんなりと春が居座ってくれるとは到底思えないが、温かくなるとついつい気が緩む。昨日はスーパーに買い出しに行く道すがら多くの年配者が春に誘われて表に出てきていた。道の真ん中を息をのむほどのスロースピードで自転車を走らせる。車はみんな怖さのあまり遠巻きに追い越していく。そりゃそうだ、何かあったら全てこちらが悪いんだから。
夕餉はホタルイカと牡蠣のオリーブオイル漬けをあてに甲州の白を飲んだ。すっきりとしていながら決して軽くない地元ワインが牡蠣と妙に合う。ホタルイカだってなかなかどうして。
一升瓶のとてもリーズナブルなものなのにこれが結構いける。甲州ブドウの甘さと酸味が複雑に溶け合う味わいが発酵するとまた別の顔を見せる。
ワインは葡萄を絞って発酵させるだけで、そのものの味がそのまま出るという。日本酒のほうがずうっと多くの手を加えなければ出来上がらないと、知り合いの作り手から聞いたことがある。
子供のころは葡萄農家の人はこれを畑で湯飲み茶碗で飲んでいたという。実際に見たことはないがあちこちで聞いた。
ここはそんな土地柄、一升瓶のワインを買っていく人が多い。二人で飲んでも三四日はかかる。さて、今晩は何をあてにいただこうか、残るは食欲と作家の阿川佐和子氏が言っておられたが、まさしくその通りで美味しく頂けるのが何よりの幸せであるのは間違いない。