昨日の夕方犬の散歩に出ると二匹のシェットランドシープドッグを連れた親子に出合った。
双方とも相手の犬を刺激しないように道の両端に分かれて通過しようとした。そして軽く会釈をする。彼岸花が道端に咲きいい光景であった。
更に、会釈したオヤジが同級生であったからなおびっくりした。「久しぶりじゃん」「何時こっちに戻って来た?」こんなやり取りから話が始まった。内容は取り留めのないもので、いい年のオヤジ同士が40年以上前の高校生の頃に戻ったような気分でイヌはそっちのけでやり取りをしていた。
すると我が家のさくらは、二匹の雌に興味津々でちょっかいを出そうとする。一匹は5歳か7歳で、もう一匹はさくらと同じ2歳とのこと。
大人の雌はガウガウ正面から来る雄に閉口気味、しかしさくらはそんな雌心などわかるはずもなく、軽くあしらわれるのがじれったくなったのか「ワン」と吠えさらに前に出る。
異性にやみくもに突進する者は撃沈するのは世の中の必定、違いと言えば落ち込むかすぐ忘れるかぐらいのもの。こんなところにも自然の法則は厳然と流れている。
同じ年の方は引っ込み思案な性格らしく同級生の後ろに隠れてしまう。嫌がるというふうでもなかったのではにかんでいたのかもしれない。
いずれにしてもさくらにしてみれば袖にされたようなものだった。
しかも連れはオヤジ同士の会話に夢中で自分のことなどそっちのけ、「どうすりゃいいんだよ」と言わんばかりにまた吠えてみる。
ワンコのイライラは分かるがこちらも犬よりも人同士のほうが今は楽しいので「はいはいどうした?」と軽く声をかける程度でちゃんと向き合う気などさらさらない。
こうした状況を和らげてくれたのが同級生の娘の大学生、20歳の花も実もあるさかりの彼女は徐々にさくらに近づいて行き頭を撫でてくれた。これでいちころ、すっかり機嫌を取り戻し柔らかな乙女の手の感触を味わっていた。
「やはりこいつも女好き」と思いつつも、下手なことを言って女子に嫌われるのが怖いのでそのことについては触れなかった。
そんなオヤジのたくらみなど知ってか知らずか、彼女はオヤジ同士の会話を一歩引いたところで聞きながら時折笑ってくれていた。
良い親子関係だなぁ、言葉にはならない思いが伝わっていったようで何ともいい雰囲気につつまれた。
私が彼が来ていたジャージの胸に甲府南とあるのが気になっていたので、「それ何?」と尋ねると「この子の上の娘が来ていたジャージ」と、あっけらかんに答えた。
二人の母校でもある甲府南高校指定のジャージらしく、しかも名札までもついたままのもので、下の短パンジャージも娘さんのおさがりならぬお上がりとのこと。
女子高生のジャージをいい年のオヤジが着ているというのは考えてみれば変な話だが、見た目はそう風変わりなものでもなかった。
横にいる娘さんも、姉さんのお古のジャージを父親が着ていることが喜ばしいことのように思っている感じであった。
この男は娘たちを尊重しているんだろうな、いい父親じゃん。
今日は得をした、そんな思いを味わっていると、あっという間に時間は流れていった。
秋の日の暮れるのは早い、通りすがろうとした頃は明るく澄んだ空が見えていたのがのがみるみる暗くなっていった。
そりゃ犬だって「早く行こうよ」と言いたくもなるわな。