前回、犬の嗅上皮が大きいことが嗅覚の鋭さの元となっている事について述べた。
この臭いを感知することが脳の始まりと言われている。生命が魚類に進化した段階で脳が頭の先に現れた。水の中で臭いをかぎ分けられるのかと、この事を知った時には思った。だが、魚類よりもはるかに視力において優れている人であっても水の中では大してよく見えない。
なのにどうして鮭は遥か外洋から自分の故郷の川に戻ってこられるのか、その匂いを覚えていてこれを嗅ぎ分けて戻って来るらしい。流石という他にない。
なにも人だけが偉いわけではない、動物はみんな優れているね、だから生き残ってこられたんだと改めて教えられた。
以前に気と水の身体論を執筆中に編集者から「オキシトンとパゾプレッソン」というホルモンを知っているかと尋ねられた。オキシトシンと云えば今や愛情ホルモンとして知られるようになったが、その当時は話題にも上らなかった。手で体の一部を触れるなどしたとき快楽を感じると脳から放出される。親子の情愛に深く関与する。
パゾプレッシンも夫婦の関係か何か、愛情に関する何らかの行為に関与するらしい。
一般的には抗利尿ホルモンとか血圧上昇ホルモンとして作用し、体の中の水分調整をする役割として知られている。
この二つのホルモンの由来はどこにあるのか、たとえば鮭が川から海に出る時に体の中の塩分濃度を高めないと海水に適応できない。そのために働くのがオキシトンらしい。そうして外洋に出て大きく成長して自分の子孫を残すために故郷の川に戻る時、海水と同じ塩分濃度で淡水の中に入ってきたのではちとまずい。そこで余計な塩分を捨てる働きをするのがパゾプレッシン。魚類から両生類、爬虫類そして哺乳類へと進化した中で二つのホルモンは重要な役割を果たすようになり出世していった。
哺乳類は乾燥した土地に強い、だから砂漠にラクダやライオンだっている。体の中の水分をいかに減らさないようにするかという事は生きる上で重要なカギとなる。これをパゾプレッシンが担っている。
それと愛情の関係は?塩分と愛情がどうつながるの?そう思うのもごもっともなことで私にもわからない、小学生女子のようにグーグル検索しても未熟な私には答えは見つからない。
これは勝手な想像で確かなものは何もない、けど、ひょっとしたらこうかもしれないという話である。
生物の進化というのは変わらざるを得ないから変わったまでのことで、誰も鰓の一部を膨らませて肺を作ったり、鰓を足に変えたりしたくはない。長い長い年月と莫大なエネルギーをかけて行った。そうしないと生き残ることが出来なかったから海から上陸した、肺や足を作った。そこにあるのは理想ではなく現実。
あらかじめ様々なケースを想定してプランを練って採算が取れるとなって進出する大企業とはわけが違う。何の後ろ盾もなく吹けば飛ぶような存在が、「とりあえずやってみろ」と与えられた役割であった。
そうした役割が進化する中で増えていき、いらなくなったものを捨てるなどして何時しか今のような状態になった。現代社会のように外部から新しい人材を取り込むことは基本的には出来ないのだから兼任していくほかない。誰もしたくない面倒なことをする者が台頭する。
オキシトンとパゾプレッシンにもこのような背景が働いていたような気がする。
哺乳類はとにかくテリトリーを必要とする。鳥のように餌のある所に高跳びできないから。人が土地に固執するのも2億年も前の習慣が今でも残っているのかもしれない。